東京創元社創立50周年記念出版
駒子シリーズ第三作『スペース』

 全国一千万駒子ファンの皆さん、お待たせいたしました。『ななつのこ』『魔法飛行』に続くシリーズ第三作、ついに登場です。

 本編の始まりは入江家のお正月準備風景です。
 前作『魔法飛行』で大冒険をした駒子は風邪をひき、クリスマスを寝て過ごすことになりましたが、日頃の精進ゆえか間もなく軽快、大みそかにはお正月用の買い物を言いつかります。ちょっとばかり難儀なブツの入手も一緒に。そのブツが駒子に〈魔が差す〉瞬間をもたらす一幕は、なかなかコミカルな味わいです。
 ごった返す年末のデパートへ赴いた駒子は、偶然瀬尾さんに出会います。彼は相変わらずの神出鬼没ぶりでアルバイトに精を出していました。自宅に電話を引いていない瀬尾さんのこと、ここで会ったが百年目。駒子は大急ぎで、「読んでいただきたい手紙があるんです」と告げるのです。

スペース  二人のキーワードである“手紙”に秘められた謎とは――。本書の前半『スペース』はこの解明で幕となり、後半『バック・スペース』では意表を衝く発展を見せます。
 第三者の目に映る駒子像が描かれる場面や、作者の学生時代を髣髴させるかのような短大生活の描写には、とても興味深いものがあります。そして、全編にミステリの精神が行き届いていることは、申しあげるまでもありません。

 この駒子シリーズ、作者も認める「内容紹介のしにくいストーリー」なのです。中でも『スペース』は随一かもしれません。その理由は……ご自身の目でお確かめください。

(2004年5月10日)
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