伝説の名画『狩人の夜』ついにDVDリリース!

 1953年、幼い兄妹が伝道師の仮面を被った殺人鬼に追いまわされるサスペンス小説が発表され、高い評価を受けた。小説の題名は『狩人の夜』、著者はデイヴィス・グラッブ。発表後間もなく、名優チャールズ・ロートンの監督により映画化。モノクロ映像の美しさと、ロバート・ミッチャム扮する伝道師の恐ろしさとで絶賛された。『恐怖の岬』での犯罪者役はあったにせよ、むしろ二枚目のミッチャムは、本編の牧師姿と、右手にLOVE(愛)、左手にHATE(憎悪)と刻まれた刺青とで、恐怖のイコンとして記憶されつづけることになる。

 なぜかこの映画、スーザン・ソンタグやジャン・リュック・ゴダールらに称賛されながら、長い間日本では注目されなかった。公開は(タイトルを変えTV放映されたことはあったようだが)本国より35年遅れる1990年の春。が、原作が翻訳されるまでには、さらに長い年月を要した。映画公開から6年、原書の刊行から43年を経た1996年のことだった。当然、どちらも絶賛を浴びたが、上映も出版も規模の大きなものではなく、ビデオも廃盤となり、「狩人」はふたたびの、しかし短い眠りにつく。2002年の末、原作は宮部みゆきの賛辞に推され、翻訳者の入念なチェックを経て創元推理文庫に収録された。そして映画は……?

 2004年1月、映画『狩人の夜』のDVDがリリースされる。
  原作を読んだとき、読者ひとりひとりの脳裏に浮かぶイメージを、さらに純化して撮影したかのような見事な映像を、この機にぜひ御覧いただきたい。
http://www.kinokuniya.co.jp/02f/d12/2_12000m.htm

 この映画の研究書が、2002年にアメリカで刊行された。プレストン・ニール・ジョーンズ著“Heaven & Hell To Play With”である。原作者グラッブ、ミッチャム、そして劇中で兄妹を守る老婦人レイチェルを演じたリリアン・ギッシュ(まさに生きる映画史!)らのインタビューを中心にまとめている興味深い本だが、映画化にあたって原作者が描いたスケッチなど、図版が多数収録されているのが、さらに面白い。ネット洋書店で手軽に買えるので、DVDを御覧になったあと、辞書をひきひき一読されるのも一興だろう。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/booksea.cgi

(2004年1月15日)
本の話題のトップへトップページへもどる