中高一貫教育の女子校で、高3で美術部の女生徒ハルナが屋上から落ちて死亡した。自殺なのか? 事故なのか? それとも……。その後、彼女の幽霊が出るという噂が広まり、国語の男性教師、宮坂と彼女の間に何かがあったという噂も流れる。
国語教師は情緒不安定に陥り、不可解な行動を続けるうちに屋上から飛び降り自殺を遂げる。
ハルナの美術部の後輩である二人の女生徒が、ことの真相を知ろうと校内をさぐり始めたが、小説家志望の宮坂が書いたという原稿が何種類か発見される。
そして、実はまだ発表号は発売前だが、彼はある雑誌の新人賞を受賞したらしいことがわかる。
受賞作は、いったいどの作品なのか? ハルナとの関係を暗示するようなあやしげな原稿がそれなのか。それとも、図書室の書庫の棚の引出しから発見された、死んだ妻の原稿を発表する男の物語がそれなのか? それとも……?
驚いたことに、宮坂は死ぬ前に、雑誌社に受賞辞退の連絡を送っていた!
死の間際に彼が図書室に置いて出た雑誌はポール・オースター特集。オースターの『鍵のかかった部屋』という、死んだ友人の小説を出版する男の物語もそこにはあった。
さらに謎めいているのは国語教師の自殺した妻が残した「ヘビイチゴ・サナトリウム」というネット上のサイト? 錯綜する小説原稿の意味は? 図書室を中心に原稿とネット上の謎が渦巻き、多感な女生徒たちは事件にふりまわされる、やがて密室殺人が浮かび上がる……。
詩人で作家の新鋭による清冽なミステリ・デビュー作!
著者、ほしおさなえさんは、大下さなえ名義で『夢網』『くらげそっくり』などの詩集があるほか、文芸誌に小説も発表しています。
(2003年12月15日)
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