ティボール・フィッシャー『コレクター蒐集』

コレクター蒐集 コレクターとは蒐集家のこと。

 コレクター蒐集……?
 本書の語り手は骨董の碗(ある時は碗、またある時は壺、そしてまたある時は瓶……)5000以上の言語を解し、人の心が読めるという不思議な骨董品です。この碗が、長きにわたって蒐集したコレクター(といっても、泥棒も、行きずりの人間もいますが)たちのカタログ。
 現在の保有者は美術品コンサルタント(鑑定人)の女性。しっかりしているようでいて、なかなか成就しない恋に悩んだりしています。彼女のへその形は碗の蒐集した2234種のうちの67番目のタイプ。即ち“埋められた禿げ頭の男”タイプです。この女鑑定人と、彼女の家に転がり込んだニンフォマニアで盗癖のある若い娘を中心に、この骨董品が関わった古代から現代までの滑稽なる人間どもの姿がみごとに浮かびあがる、奇想天外でシュールでおかしい小説。

 ティボール・フィッシャーは、1959年生まれ。ケンブリッジ大卒。ローレンス・ノーフォークやルイ・ド・ベルニエールらとともに、イギリスの〈グランタ〉誌で期待の若手作家の一人に選ばれました。両親は英国に移住したハンガリー人で、第1作目の小説はベティ・トラスク賞を受賞し、ブッカー賞の候補にもなっています。本書は彼の3作目の小説です。解説=新元良一。

ティボール・フィッシャーは言葉の大魔術師である。
――リチャード・ドゥーリング

シュールなひねりのきいた、強烈なエンターテインメント性と、くらくらするほどの喜劇性!
――ピープル誌
(2003年4月15日)
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