キャシー・マロリー。ニューヨーク市警巡査部長。主にコンピュータ・ハッキングで発揮される天才的な頭脳と、張り込みや尾行ができないほどの鮮烈な美貌の持ち主。父も母もなく、街角で盗みと逃走に明け暮れた幼年時代ゆえか、感情を顔に出すこともない。彼女には善も悪もない。ただ機械のように目的を遂行するだけ。
里親である警察官ルイ・マーコヴィッツとその妻ヘレンの愛を一身に受け、親友でコンサルタントのチャールズ・バトラーや同僚のライカーの熱い友情を受けながらも、彼女はひとり、別の世界にいるかのように、冷たく美しく佇んでいる。まるで、氷を刻んだ天使像のように……。
ミステリの世界に並み居る女性の探偵や捜査官の中でも、ひときわ異彩を放つのがこのマロリー。刑事なのに盗みやハッキングで手掛かりを得、捜査のためには同僚や上司を騙すことも、証人を恫喝することもいとわず、法を超えた行動を冷静にしつつ捜査を進めていくさまに、あなたは読みはじめるや驚くことでしょう。しかし、その行動が精密な論理に裏打ちされていることに、そして、そんな彼女が時に見せる内面の、優しさや傷つきやすさに触れたとき、あなたは共感せずにはいられなくなっていることでしょう。
そんなマロリーの事件簿を御紹介します。