久生十蘭の名作「湖畔」が舞台化

 行くところ可ならざるはなき小説の魔術師、久生十蘭。卓越した構成力と自在な筆の冴えで、時にはシリアス、また時にはノンシャランな持ち味の、多彩な物語を紡ぐ腕前は類を見ません。
 その十蘭が生誕百年を迎えた今年、代表作のひとつ「湖畔」が咲良舎によって舞台化されることになりました。「湖畔」といえば、北村薫が『ミステリは万華鏡』(集英社文庫)のなかで、一章をさいてその魅力を語っていたことをご記憶のかたも多いでしょう。狷介不羈の主人公がくぐりぬける震えるような物語が、異様な輝きを放つ名作です。
 演劇に通暁した手練の書いたこの小説が、はたしていかなる芝居にしあがるか。スタッフとキャスト一同の努力が素晴らしい実を結ぶことを期待したいと思います。

 公演の詳細は以下のとおりです。

・日時 2002年12月5日(木)19時
    2002年12月6日(金)15時&19時
    2002年12月7日(土)14時&18時

・場所 両国シアターX(TEL 03-5624-1181)
・チケット
(全席自由席・日時指定) 前売 3800円
当日 4000円
学生 3000円(要学生証呈示)

・前売予約 チケットぴあ 03-5237-9988
 ローソンチケット 0750-00-0903(要Lコード:39682)
 咲良舎 03-3726-6887/090-9203-8621
http://www.sakuranotayori.com
・問合せ先(有)咲良舎
 TEL&FAX 03-3726-6887/090-9203-8621

 創元推理文庫には、〈日本探偵小説全集〉の第8巻として『久生十蘭集』が収められています。緻密に人間心理の奥底をえぐる「湖畔」「ハムレット」という彫心鏤骨の名編を筆頭に、恐怖と寂寥の珠玉掌編「昆虫図」「水草」「骨仏」、本格探偵小説の醍醐味を再現する〈顎十郎捕物帳〉(沖を行く船の中から23人の人間が忽然として姿を消したとしか思えない怪異「遠島船」、見せ物小屋の鯨が瞬時に消失する「両国の大鯨」など、全24話を完全収録)、そして〈平賀源内捕物帳〉から「萩寺の女」「山王祭の大象」「長崎ものがたり」の秀作3編というセレクション。これに、清水邦夫による解説、中島河太郎編の年譜を加え、巻末付録としては、十蘭の病没の翌年に幸子夫人がお書きになった貴重な回顧文と、捕物帳研究家・柴田和夫のエッセイを収録しました。
 この機会にお愉しみいただけますと幸いです。

(2002年10月30日)
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