H・G・ウェルズ原作
『タイム・マシン』映画化

 SF史に名だたるH・G・ウェルズの傑作SF「タイム・マシン」が映画化されました。主演は『メメント』『LAコンフィデンシャル』のガイ・ピアース、共演に『運命の逆転』でアカデミー賞主演男優賞を受けた名優ジェレミー・アイアンズ。そして本作が監督デビュー作となるサイモン・ウェルズは、原作者H・G・ウェルズの曾孫(ひまご)に当たります。
 映画のストーリーは以下のとおりです。

 舞台は1899年ニューヨーク。若き科学者アレクサンダーは恋人エマにプロポーズ、二人は永遠の愛を誓う。ところが幸せの絶頂にあったその直後、エマは強盗に撃たれ、アレクサンダーの腕の中で息を引きとる。
 最愛の女性を失って深く嘆き悲しんだアレクサンダーは、その日から寝食を忘れ取り憑かれたように研究に没頭し、4年後、ついにタイムマシンを完成させる。彼はタイムマシンでエマが死んだ日に戻り、最愛の女性の死という運命を変えようとしていたのだ。
 「あの日」に戻ることに成功したアレクサンダーは、彼女が強盗に襲われることがないように先手を打つが、安心したのも束の間、エマは馬車にひかれて命を落としてしまう。
 「過去を変えても彼女の死の運命は変えられないのか……」
 アレクサンダーはその答えを求めてタイムマシンで未来に旅立つ。
 彼が最初に降り立ったのは、科学が発達し、人々が月へ移住する近未来、2030年のニューヨーク。しかしそこでは答えが得られず、さらに7年後の2037年に再び降りるが、このときニューヨークは、月が崩壊し隕石が降り注ぐ大災害のために廃墟と化していた。アレクサンダーはそこで怪我を負って気を失い、なんとそのまま80万年後の未来にとばされてしまう。
 気絶したままたどりついた遙かな未来の世界で、彼はマーラとケイレンというイーロイ族の姉弟に助けられる。だが、傷を癒す平和な生活も長くは続かなかった。ある日イーロイ族の村を怪物のような恐ろしい姿のモーロック族が襲い、村人達が攫われたのだ。その中に恩人マーラもいたため、アレクサンダーはなんとか彼女を助けようと単身地下にあるモーロック族の住処に忍び込むが……

 1890年の、山高帽の紳士や長いドレスの淑女が行き交い、馬車が道を占領するレトロなニューヨーク、2030年の高層ビルが林立しハイテク技術が溢れる近未来のニューヨーク、そして80万年後の古代文明の時代に戻ったかのようなジャングルに埋もれたニューヨークと、その舞台はめまぐるしく変化しますが、その中を時間旅行する19世紀風のレトロなタイム・マシンが意外と違和感がなく、美しくすらありました。イムマシンの周りで、ものすごい勢いで変化するニューヨークの、そして世界の有様は、まさに映像のマジック、映画ならではの醍醐味。タ近未来のニューヨークで公立図書館アレクサンダーが出会う、膨大な知識を蓄積しどんな質問にでも答えてくれるという、プログラミングされた疑似人格“ボックス”も、遊び心が詰まった味のある存在でした。ドライな原作にくらべて、全体にドラマチックなテイストですが、なかなかにバランスよく仕上がっています。

タイム・マシン 『タイム・マシン ウェルズSF傑作集1』

●配給元 ワーナーブラザーズ映画
http://www.warnerbros.co.jp/
(2002年7月15日)
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