キャプテン・フューチャーのライバルたち
創元SF文庫のスペースオペラ12選

 《キャプテン・フューチャー全集》《完全新訳版レンズマン・シリーズ》をはじめとして、創元SF文庫にはスペースオペラの傑作が数多く収録されています。ここでは幅広く12作を選んで御案内します。(2004年12月現在品切れの作品も含まれています)


『火星のプリンセス』〈合本版・火星シリーズ第1集〉
 エドガー・ライス・バローズ/厚木淳訳


火星のプリンセス  スペースオペラの源流にして異世界活劇の雄。人間そっくりの赤色人、四本腕の巨大な緑色人たちが戦争に明け暮れる火星に、ある日忽然と飛来した元南軍大尉ジョン・カーター。彼は縦横無尽の活躍の果て、絶世の美女デジャー・ソリスと結ばれるが……。
 火星シリーズは99年より、3作ずつ収録した合本版を刊行。『火星の幻兵団』『火星の秘密兵器』『火星の古代帝国』で完結しました。高橋源一郎氏が熱烈に推薦してくださっています。(カバー=武部本一郎)

『スター・キング』
 エドモンド・ハミルトン/井上一夫訳


 《キャプテン・フューチャー》や《スターウルフ》シリーズで知られるアイデア派作家ハミルトンが全力を注ぎこんだ宇宙活劇。
 20世紀のサラリーマン、ジョン・ゴードンは、ある日2000世紀の星界王国から「心と心を」交換しようと呼びかけられ、冒険の旅に出る。ドク・スミスばりの超兵器も登場します。続編『スター・キングへの帰還』では、ジョン・ゴードンは心だけでなく身体をともなって、再び未来世界に旅立ちます。(カバー=東京創元社装幀室)

『暗黒星雲のかなたに』
 アイザック・アシモフ/沼沢洽治訳


暗黒星雲のかなたに  高度な科学技術力をもつテイラン帝国の制圧下にある銀河系。帝国転覆の命を受けて地球大学に留学していた星雲諸国の王子バイロンのもとに、ある情報がもたらされた。強力な反乱軍が、いずこかの惑星に存在するという――暗黒星雲のかなたに。
 アシモフの《銀河帝国》未来史を構成するなかでも、とりわけ活劇色の濃厚な作品。田中芳樹氏が原体験の1冊として推薦。(カバー=田中光)

『宇宙船ビーグル号の冒険』
 A・E・ヴァン・ヴォークト/沼沢洽治訳


 1000人の乗員をのせて深宇宙をゆく探査船ビーグル号。人類科学の粋とも言えるこの船に襲いかかる、恐るべき生命体――“黒い破壊者”ケアル。“緋色の不協和音”イクストル。かつてSFが創造した中でも最高のモンスターたちに立ち向かうのは、若き綜合科学者(ネクシャリスト)エリオット・グローヴナー。
 この作品の虜になって、SFを読むようになった人は数知れません。  『非Aの世界』『イシャーの武器店』や『スラン』でも知られる天才作家ヴァン・ヴォークトの、オールタイム・ベスト級の不滅の傑作。(カバー=加藤直之)

『歌う船』
 アン・マキャフリー/酒匂真理子訳


歌う船  宇宙船のボディをもつ少女は、人間のパートナーを乗せて任務に出発する。パーンの竜騎士シリーズと並び賞される、人気女流作家の代表作。
 “ロマンチックSF”と形容されがちですが、クラシカルな活劇の魅力にも満ちた連作となっています。60年代に書かれた著者最初期の作品ですが、90年代になってから他作家との共作で続編シリーズが刊行されました。マーセデス・ラッキーとの共著『旅立つ船』をはじめ、続編中では『戦う都市』が活劇色も濃厚な一作。(カバー=浅田隆)

『惑星カレスの魔女』
 ジェイムズ・H・シュミッツ/鎌田三平訳


惑星カレスの魔女  商業宇宙船のパウサート船長は、寄港先でつまらぬ揉め事に首をつっこみ、奴隷にされていたチビ三姉妹を助けてやった。だがこの姉妹たちが、なんと“禁断の惑星”カレスの魔女だったとは! おかげで船長は恋人も故郷も失い……やがて銀河じゅうを騒動の渦に巻き込むことに。
 古き良きスペースオペラ宇宙を再現した、やさしさ溢れるユーモア・コメディ!(カバー=宮崎駿)

『神の目の小さな塵』(上下)
 ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル/池央耿訳


神の目の小さな塵  3017年、帝国宇宙海軍巡洋艦マッカーサー号は深宇宙で、人類にとって初めての異星種族船と接触した。これがのちに人類を震撼させる恐るべき出会いだった。
 ニーヴンとパーネルの超強力コンビによる合作ハードSFの記念すべき第1弾。きわめてリアルな宇宙戦を描く一方、まったく新しい異星人を創造して、70年代SFの転回点となった巨編。ロバート・A・ハインラインが「これまでに読んだ最高のサイエンス・フィクション」と絶賛。続編として『神の目の凱歌』が発表されています。(カバー=加藤直之)

『鞭打たれる星』
 フランク・ハーバート/岡部宏之訳


 ここに取り上げると意外に思われるかもしれません。
 《ジャンプドア》2部作は、『デューン/砂の惑星』で有名な巨匠ハーバートにこの作品ありと謳われた異色作なのですが、第1作『鞭打たれる星』のほうは、じつはユーモア溢れる小気味よい宇宙SFになっているのです。
 様々なエイリアン種族が跋扈する宇宙の根元の秘密にせまる、“特命サボタージュ工作員”(ってて何!?)ジョージ・X・マッキーの活躍! 詩的な結末も忘れがたい逸品です。(カバー=加藤龍勇)

『マッカンドルー航宙記』
 チャールズ・シェフィールド/酒井昭伸訳


 太陽系随一の天才にして変人物理学者マッカンドルーは、まったく新しい星間航法を発明し、相棒の女船長ジーニーとふたり、大宇宙に船出する。ふたりを待ち受ける脅威の事件の数々!
 科学者作家として有名な著者が、ハードSFとスペースオペラを絶妙に融合させて贈る連作5編。巻末には著者自身が明かす長文の自作解説も収録されています。星雲賞海外長篇部門受賞作。(カバー=加藤直之)

『サンティアゴ』(上下)
 マイク・レズニック/内田昌之訳


 遠未来の銀河で、星から星へと渡りつつ、悪逆のかぎりを尽くす謎の男“サンティアゴ”。この伝説の無法者は、巨額の懸賞金をかけられながらも、いまだに数多の賞金稼ぎたちの追撃をかわして、正体を謎につつんだままだった……。
 星雲賞受賞作『キリンヤガ』でも知られる著者が、西部劇的スペースオペラを見事に現代SF界に甦らせた傑作。松本零士の宇宙が好きな方に是非ともお薦めします。(カバー=末弥純)

『戦士志願』
 ロイス・マクマスター・ビジョルド/小木曽絢子訳


戦士志願  現代スペースオペラの雄といえば、本書にはじまるヴォルコシガン・シリーズです。
 貴族に生まれながらも身体的ハンデで士官学校の門を閉ざされた17才のマイルズは、勇気と知略だけで単身宇宙に乗り出した……しかし、さすがの彼も想像していなかった、よもや自分が傭兵艦隊を創設し、実戦を指揮することになろうとは!
 このあとにつづく《マイルズ》シリーズの詳細はこちらをご覧ください。続編の『ヴォル・ゲーム』も、恒星間戦略が重要な要素となるミリタリー色の濃い傑作です。(カバー=浅田隆)

『遠き神々の炎』(上下)
 ヴァーナー・ヴィンジ/中原尚哉訳


 人類が辺境の星で発掘した太古の情報アーカイヴから、謎の“邪悪意識”が解き放たれた。この謎の存在は、様々な星間種族で構成される通信ネットワーク銀河を恐るべき勢いで浸食しはじめた。
 とある家族が、事件の発端の星からワクチンを積んで脱出するが、彼らはある惑星に不時着してしまう。そこは、複数個体が集まって初めて一個の知性体となる、犬に似た生命体が支配する惑星だった。犬たちは中世西欧のような文明を営んでおり……
 奇想アイデアにもとづく本格宇宙SFにして、伝統的な活劇が満喫できる傑作。ヒューゴー賞長篇部門受賞作。姉妹編として『最果ての銀河船団』(上下)も出ています。(カバー=鶴田謙二)
(2002年2月10日/2004年12月27日)
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