ティム・バートン監督が、
不滅の傑作『猿の惑星』を再映画化

猿の惑星 2001年7月28日、全国ロードショー公開
『猿の惑星』
ピエール・ブール/大久保輝臣訳
創元SF文庫



●ヒトは万物の霊長ではない――原作小説『猿の惑星』とは

 1963年、発表されるや世界中にセンセーションを巻き起こした問題作です。
 物語はまず、光子帆船に乗って宇宙空間でのバカンスを楽しむカップルがメッセージボトルを拾うシーンから始まります。このボトルにはいっていた奇妙な手記が、『猿の惑星』のストーリーです。
 記述者はフランス人の新聞記者、ユリッス・メルー。
 西暦2500年、彼は科学者たち2人とともに、人類初の恒星間飛行に旅立ちました。彼らは、到着した先のベテルギウス星系で驚くべき光景を目のあたりにします。この星にも人間種族は存在したのです。
 でもそれ以上にショッキングだったのは……この星の支配種族はなんと、喋り、武器を操る猿たちでした。しかも彼らは20世紀地球の人類社会そっくりの猿文化を築きあげているのです。いっぽう人間はといえば、知能も文化も持たない、猿たちに狩りたてられる動物でしかありません。
 猿たちがなぜ人間よりも進化したのかというと、猿は二本の手だけでなく、両脚でも道具を持て、指も人間より長いので遙かに複雑な作業ができるからだ、というのです。つまり、人間よりも猿のほうが進化するのは自然の摂理なのだというわけです。
 捕らえられた主人公は最初「変わった動物」としか見なされません。やがてチンパンジーの女性科学者と言葉を通じさせるようになり、「特別な人間」として認められるのですが……。
 ――さて、実はこの原作小説には、新旧の映画版とはまったく異なる、驚くべき二重仕掛けの結末が用意されています。 SFファンを自任する方はもとより、「猿」映画ファンの方々にも堪能していただけると思います。


『戦場にかける橋』の著者――原作者ピエール・ブールとは

 1912年、フランス南部アヴィニヨン生まれ。技術者としての教育を受けたのち東南アジアへ渡る。第二次大戦時には、現地でフランス軍に従軍。日本軍の捕虜となった経験をもとに執筆した『戦場にかける橋』は、この『猿の惑星』と並ぶ代表作で、その後映画化されました。1994年没。享年81歳。
 SFの書籍としては他に、短編集『E=mc2』、『カナシマ博士の月の庭園』(別題『月への挑戦』)が邦訳されています(現在はともに絶版)。

(2001年7月15日)
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