2012年度の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞
贈呈式ひらかる

 去る2012年10月5日、飯田橋のホテル メトロポリタン エドモント〈悠久の間〉にて、〈第22回鮎川哲也賞〉および〈第9回ミステリーズ!新人賞〉の贈呈式が開かれました。当日は、多数の皆さまにご来席いただいたほか、動画共有サービスUstream(ユーストリーム)によるインターネット生中継もおこないました。

2012年度贈呈式の模様1  〈第22回鮎川哲也賞〉は青崎有吾氏『体育館の殺人』が受賞しました。また、〈第9回ミステリーズ!新人賞〉は近田鳶迩氏「かんがえるひとになりかけ」が受賞、中村みしん氏の「○の一途な追いかけかた」(応募時の筆名・からくりみしんを改名)、天野暁月氏「清然和尚と仏の領解」(応募時の筆名・天野泡吟を改名)が佳作入選しました。受賞、入選された皆様、おめでとうございます。
 それでは贈呈式の様子を、私、新人Zがレポートしていきましょう。

 受賞者の前途を祝うため、贈呈式には大勢の作家、評論家、書店員などおよそ300名の出版関係者が駆けつけたのです。三つの部屋を使った会場には、見渡す限りの人、人、人! 移動するにも苦労するくらいです。
 大人数とはいえ、皆さんは名札をつけているので、どなたか一目で分かり安心しました。「あっ、○○先生がいらっしゃる!」と、ついファン目線でテンションが上がることもしばしば……。

2012年度贈呈式の模様2  さて、受賞者と選考委員の方々がそろったところで、レポートに戻ります。
 まず、〈第22回鮎川哲也賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して芦辺拓先生が述べられました。
「鮎川哲也賞も今年で22回目。第1回の贈呈式の時は、今回の受賞者の青崎さんはまだお生まれになっていなかった」と感慨深く述べた後に、「『体育館の殺人』は、真正面から本格ミステリに取り組み、それもエラリー・クイーンばりのロジカルな推理に、堂々と挑戦している点に好感が持てました。しかも、推理をよく検討していると選考委員の間で評価されました。また、作品の肝とも言うべき、雨傘の論理。まさにクイーンばりに、一本の傘から事件の真相を解いていくという推理の醍醐味が味わえます」と評しました。

 次に、受賞者の青崎有吾氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに選考委員の北村薫先生より、正賞のコナン・ドイル像が手渡され、〈第21回鮎川哲也賞〉の受賞者である山田彩人先生より花束が贈呈されました。また、2010年にご逝去された北森鴻先生のご遺族からの花束が、代理として太田忠司先生より、〈浜松ミステリー愛好会〉からの記念の花束が、谷島屋書店イオンモール浜松志都呂店・寺田結美さんより、それぞれ贈呈されました。

 受賞の挨拶で、青崎有吾氏は「栄えある鮎川哲也賞をいただき、たいへん誇らしい気持ちです。先ほどコナン・ドイル像をいただき、『これが鮎川哲也賞の重さだ』とその重みを文字通り痛感いたしました。私が果たしてこの重さと釣り合うのか心配ですが、せっかくこうしていただいたチャンスなので、その釣り合いが上手くとれるように、長く書き続けていきたいと思います」と大ぶりなジェスチャーを交えながら、受賞の喜びと今後の抱負を語られました。

2012年度贈呈式の模様3  続いて、〈第9回ミステリーズ!新人賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して新保博久先生が述べられました。
「短編で、ミステリの歴史を変えるくらい大きい作品に出合うのはなかなか難しいのですが、今年は幸い出合うことができました。受賞作は作品の完成度が最も高かったです。瑕が少々あっても、これほど面白く読ませるというのは、たいしたものではないかと思い、推させていただきました」と、軽妙に評しました。

 それから、受賞者の近田鳶迩氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに選考委員の法月綸太郎先生より、正賞の懐中時計が手渡され、〈第7回ミステリーズ!新人賞〉の受賞者である美輪和音先生より花束が贈呈されました。

 受賞の挨拶で、近田鳶迩氏は「この度はミステリーズ!新人賞をいただきまして、一ミステリファンとして心から御礼を申し上げます。個人的には、自分の名前で本を一冊出せて初めて作家になれる、という気持ちが強いです。学ばなければならないことも山積みだと思いますが、一日も早くそうしたハードルをクリアしていきますので、ご指導ご鞭撻いただけますよう、よろしくお願いいたします」と噛みしめるように、今後の決意を語られました。

2012年度贈呈式の模様4  そして、長谷川晋一による挨拶のあと、〈第9回ミステリーズ!新人賞〉佳作のふたり、中村みしん氏と天野暁月氏が紹介され登壇しました。
 最後に、乾杯の辞として、今年作家生活40周年を迎えた、本格ミステリ作家クラブ会長の辻真先先生より「受賞された方々の年齢を聞き、下手すると孫より若いかもしれないと思いました。ミステリというのは代々繋がっていき、優秀な方々が出てくるのだなと分かり、とても嬉しく思います。まるで祖父と孫のようだと言いましたが、創作に年齢は関係ありません。まったく同じ創作の舞台に立っているので、ぜひこれからもよろしくお願いいたします」と、お言葉をいただきました。

2012年度贈呈式の模様5  その後、会場は大いに歓談で盛り上がりました。はじめは緊張されていた受賞者の方々も、リラックスして先輩作家の皆さんと交流していました。また、相沢沙呼先生がテーブルでマジックを披露していたりと、楽しい光景も各所で見られました。
 そうして大盛況の中、華やかな贈呈式は幕を閉じました。


 〈第22回鮎川哲也賞〉受賞作、青崎有吾『体育館の殺人』は好評発売中です。〈第9回ミステリーズ!新人賞〉受賞作の近田鳶迩「かんがえるひとになりかけ」、および両賞の選評は『ミステリーズ!』vol.55に掲載されています。
 次回〈第24回鮎川哲也賞〉は平成25年10月末日〆切、〈第10回ミステリーズ!新人賞〉は、平成25年3月末日〆切となります。皆さまのご応募をお待ちしております。

鮎川哲也賞の応募要項はこちらを、ミステリーズ!新人賞の応募要項はこちらをご覧ください。
(2012年11月5日)

●前年の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞レポートを読む
同賞および〈第8回ミステリーズ!新人賞〉の選評は『ミステリーズ!』vol.49に掲載されています。
 次回〈第23回鮎川哲也賞〉は平成24年10月末日〆切、〈第9回ミステリーズ!新人賞〉は、平成24年3月末日〆切となります。皆さまのご応募をお待ちしております。