100年フェア






 西暦2000年には、20世紀の100年間を振り返る試みが各所でおこなわれました。
 20世紀を明確に区切る、時代ごとのエポック・メイキングな作品を多く揃えている小社では文庫企画として「100年フェア」を企画・開催しました。このフェアは、20世紀の100年間を、それぞれテーマを定めて13の時代に区分し、欠くべからざる作品を取りそろえたものです。
(2000年春から全国主要書店で順次開催しました)
【テーマ一覧】
物語の源流:19世紀
ミステリと幻想の時代:1900〜1910年代
ミステリ長編時代の到来:1920年代
ミステリの黄金時代:1930年代
都会派ミステリの時代:1940年代
サスペンス黄金時代:1950年代
SFの黄金時代:1950年代
SFの改革:1960年代
探偵小説の復権:1970年代
ハードSFの新時代:1970年代
現代ミステリと現代SF:1980年代
百花繚乱:1990年代
日本ミステリ・ルネッサンス:1990年代

■物語の源流…………………19世紀
  『フランケンシュタイン』メアリ・シェリー/森下弓子訳(1831年)
『ブレードランナー』観てるよね? じゃ、これ読んだ? まだ? 読んでみてよ。ただの古典ホラーじゃないから。

  『ポオ小説全集1』エドガー・アラン・ポオ/阿部知二他訳(1833年〜)
ポオって誰? 天才詩人で呑んだくれ、ミステリ・SF・ホラーの元祖。そのアイデア、才能のきらめき、今でもすごい。

  『月長石』ウイルキー・コリンズ/中村能三訳(1868年)
数奇な運命に彩られたダイヤモンド。その盗難事件を物語興味豊かに語り上げ、セイヤーズも絶賛した古典中の古典。

  『海底二万里』ジュール・ヴェルヌ/荒川浩充訳(1869年)
SF小説の開祖が描く不朽の名作。反逆者ネモ船長率いる人類初の潜水艦ノーチラス号で巡る、神秘と驚異の大海洋の旅!

  『ソロモン王の洞窟』H・R・ハガード/大久保康雄訳(1885年)
血湧き肉躍る冒険物語の原点。この一冊がなければ『インディ・ジョーンズ』も『ハムナプトラ』も存在しえなかった!

  『未來のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン/齋藤磯雄訳(1886年)
女神のように美しい恋人イヴの魂の卑俗さに絶望した青年のため、エディソンがイヴ生き写しの人造人間を創造したが……

  『シャーロック・ホームズの冒険』コナン・ドイル/阿部知二訳(1892年)
我らが名探偵シャーロック・ホームズ! 時代を超えて読み継がれている、胸躍る冒険譚の数々を収めた傑作短編集。

  『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー/平井呈一訳(1897年)
あまりにも有名な、ホラー古典中の古典。スティーヴン・キングもコッポラも菊地秀行も、誰もが絶賛、必読の超傑作!

  『宇宙戦争』H・G・ウェルズ/中村融訳(1898年)
英国に墜落した謎の物体から現れたのは、人類を上まわる進化を遂げた火星人たち。世界が初めて体験した宇宙からの襲撃。


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■ミステリと幻想の時代……1900〜1910年代
  『怪盗紳士リュパン』モーリス・ルブラン/石川湧訳(1907年)
イギリスにホームズがいれば、フランスにはリュパンがいる。その初登場作から、ホームズとの対決まで、8編を収録。

  『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー/宮崎嶺雄訳(1907年)
作者はポオやドイルに不満を抱き、「金庫のように密閉された部屋での犯罪」を案出したという。不可能犯罪ものの古典。

  『ブラウン神父の童心』G・K・チェスタトン/中村保男訳(1911年)
全編に溢れる逆説的な論理によって、独自の世界を作り上げた稀有な作品。「秘密の庭」「折れた剣」などの名作を収録。

  『トレント最後の事件』E・C・ベントリー/大久保康雄訳(1913年)
「探偵と恋愛の有機的な結合に見事に成功した」と評される本書は、黄金時代の先駆けとなった記念碑的名作である。

  『火星のプリンセス』エドガー・ライス・バローズ/厚木淳訳(1917年)
快男児カーターは忽然と火星に飛来した。乱世戦国の火星で繰り広げられる冒険とロマンス。最高のスペースオペラの開幕。

  『ラヴクラフト全集1』H・P・ラヴクラフト/大西尹明訳(1917年〜)
20世紀最大のホラー作家が創造した“宇宙的恐怖”の物語。暗黒神話の底知れぬ世界は、いまだに読者を捉えて離さない。


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■ミステリ長編時代の到来……1920年代
  『樽』F・W・クロフツ/大久保康雄訳(1920年)
パリから送られてきた樽の中から見つかった死体。英仏両国での捜査活動を丹念に描き出した、クロフツのデビュー作。

  『赤い館の秘密』A・A・ミルン/大西尹明訳(1921年)
あのミルンが一冊だけ書いたミステリが本書である。だが、一冊だけとはいえ、歴史に名を残すには充分な傑作だった。

  『赤毛のレドメイン家』イーデン・フィルポッツ/宇野利泰訳(1922年)
風光明媚なイタリアのコモ湖畔を舞台に描かれる殺人事件。その名文に酔いしれた乱歩は、本書をベスト10に入れている。

  『陸橋殺人事件』ロナルド・A・ノックス/宇野利泰訳(1925年)
雨上がりのゴルフ場で男の死体を発見した四人組。不法侵入や証拠隠匿も辞せず、脱線転覆ぎみの素人探偵を断行するが……

  『アクロイド殺害事件』アガサ・クリスティ/大久保康雄訳(1926年)
その大胆なトリックは驚愕と共に論争をもたらした。セイヤーズは賞賛し、ヴァン・ダインは否定した。では、あなたは?

  『僧正殺人事件』ヴァン・ダイン/井上勇訳(1929年)
マザー・グースの詩をなぞって行われる奇怪な連続殺人! 『グリーン家殺人事件』と並んで、著者の最高傑作とされる。

  『毒入りチョコレート事件』アントニイ・バークリー/高橋泰邦訳(1919年)
犯罪研究会の面々が、警察も匙を投げた難事件に挑戦。六人六様の捜査結果を披露するのだが、はたして真相はいかに?

  『孤島の鬼』江戸川乱歩(1930年)
恋人を密室状態で殺された蓑浦は、その調査を頼んだ友人までも衆人環視下で殺されてしまう。真相を追って赴く島には……


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■ミステリの黄金時代………1930年代
  『マルタの鷹』ダシール・ハメット/村上啓夫訳(1930年)
その内面描写を排した文体で、ハードボイルドの父とも呼ばれるハメットの代表作。『血の収穫』『ガラスの鍵』も必読。

  『男の首 黄色い犬』ジョルジュ・シムノン/宮崎嶺雄訳(1931年)
真実を知るためにメグレが仕掛けたのは、死刑囚を脱獄させるという大博打だった(『男の首』)。初期の傑作2編を収録。

  『レディに捧げる殺人物語』フランシス・アイルズ/鮎川信夫訳(1932年)
ドメスティック・バイオレンスとはまた違う、この不可解さ。淡々と綴られる曰く言い難い結婚生活の果ては……こわい!

  『Xの悲劇』エラリー・クイーン/鮎川信夫訳(1932年)
世に名高い〈レーン四部作〉の第1作であり、クイーンの代表作でもある。本書を読まずに本格を語ってはならない。

  『エジプト十字架の謎』エラリー・クイーン/井上勇訳(1932年)
T字形に磔にされた首なし死体。この猟奇的な連続殺人に、エラリーの明晰な推理が冴えわたる。“読者への挑戦”付き。

  『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ/浅羽莢子訳(1934年)
クリスティと並ぶミステリの女王の最大傑作。九告鐘の響き! 初期長編の『不自然な死』もハイセンスな秀作で、お薦め。

  『白い僧院の殺人』カーター・ディクスン/厚木淳訳(1934年)
屋敷を取り巻く新雪に、足跡も残さず出入りした殺人者!? この魅力的な謎を“不可能犯罪の巨匠”はどう料理したのか。

  『猿来たりなば』エリザベス・フェラーズ/中村有希訳(1942年)
平穏な片田舎で突如発生した誘拐殺害事件。だが、被害者というのが、なんと……。ユーモラスでトリッキーな傑作本格。


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■都会派ミステリの時代……1940年代
  『大いなる眠り』レイモンド・チャンドラー/双葉十三郎訳(1939年)
不滅の探偵フィリップ・マーロウの記念すべきデビュー長編! 減らず口を叩きながら街をゆく姿にいかれた人、数知れず。

  『コルト拳銃の謎』フランク・グルーバー/小西宏訳(1941年)
ボディ・ビルのパンフレット売りとその生きた商品見本(!)の珍コンビが、抱腹絶倒の大活躍。粋なユーモア探偵小説。

  『こびと殺人事件』クレイグ・ライス/山田順子訳(1942年)
死体隠しと犯人捜しに獅子奮迅の活躍を見せるマローン弁護士たち。滅多矢鱈に面白い、都会派ライスの傑作ユーモア本格。

  『暁の死線』ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳(1944年)
夜の大都会で出逢った若い男女。故郷に帰る夜明けのバスに乗るためには、五時間以内に殺人の濡れ衣を晴らすしかない!

  『シカゴ・ブルース』フレドリック・ブラウン/青田勝訳(1947年
父親を殺された少年が、人生の裏表を知りつくした伯父に手を引かれて、一歩一歩成長していく。爽やかなミステリ青春編。


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■サスペンス黄金時代…………1950年代
  『ひとりで歩く女』ヘレン・マクロイ/宮脇孝雄訳(1948年)
超絶技巧の物語。それ以上の贅言は無用。めまいを誘う狡知、縦横無尽に張り巡らされた伏線
……書いちゃいかんというに。

  『まっ白な嘘』フレドリック・ブラウン/中村保男訳(1953年)
短編を書かせては古今随一の名人の代表的傑作集! サスペンスから足跡のない殺人まで、くところ可ならざるは無き。

  『二人の妻をもつ男』パトリック・クェンティン/大久保康雄訳(1955年)
緊迫の物語と巧妙な謎解きはミステリ直伝。が、そこに自己発見と再生の劇が重ねられるから、たまらない。胸を打つ名作。

  『歯と爪』ビル・S・バリンジャー/大久保康雄訳(1955年)
その驚くべき結末はまさに申し分ない、と評される奇才の最高傑作。哀愁漂うサスペンスの果てに待つ、大トリックとは?

  『わらの女』カトリーヌ・アルレー/安堂信也訳(1956年)
百万長者の求妻広告に応じた女性を待っていたのは、正確巧緻な完全犯罪計画! 強烈なサスペンスにむせる、古典的名作。

  『殺す風』マーガレット・ミラー/吉野美恵子訳(1957年)
表面上これほど静かな小説も珍しい。だがじつは、そこここに悲哀の感情が隠されているのだ。比類ない巧緻を誇る名品!

  『サイコ』ロバート・ブロック/夏来健次訳(1959年)
サイコ・スリラーといえば『ハンニバル』? 『ボーン・コレクター』? いやいや、これが最初にして最高の傑作だ!

  『サムシング・ブルー』シャーロット・アームストロング/森茂里訳(1962年)
娘は無邪気に婚約の喜びに浸っていた。だが、彼女は知らなかったのだ。その男が、母を殺した真犯人だということを!

  『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ/望月芳郎訳(1962年)
私はこれから物語る殺人事件の、探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある。一体私は誰? 斬新!


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■SFの黄金時代……………1950年代
  『わたしはロボット』アイザック・アシモフ/伊藤哲訳(1950年)
20世紀最高の科学者作家アシモフが予見したロボット社会。人間型ロボットが開発される現在、ひときわ豊かに輝きを放つ。

  『宇宙船ビーグル号の冒険』A・E・ヴァン・ヴォークト/沼沢洽治訳(1950年)
千人の乗組員を乗せて深宇宙を飛ぶ探査船ビーグル号を次々と襲う超生物たち。人類科学は勝利するか? 宇宙SFの精髄。

  『地球幼年期の終わり』A・C・クラーク/沼沢洽治訳(1953年)
突如地球に飛来した異星人たちは、人類にユートピアをもたらしたかに思えたが。究極の人類進化を描くクラークの最高作。

  『分解された男』アルフレッド・ベスター/沼沢洽治訳(1953年)
テレパシーが日常化し、犯罪が不可能となった時代に発生した殺人事件に、超能力警察が挑む。第1回ヒューゴー賞受賞作。

  『天使と宇宙船』フレドリック・ブラウン/小西宏訳(1954年)
奇抜な発想とウィットに富んだ語り口は、今も他の追随を許さない。星新一と並び称されるショートショートの名手の傑作。

  『10月はたそがれの国』レイ・ブラッドベリ/宇野利泰訳(1955年)
『火星年代記』で知られる、SFファンタジイ界最高の叙情派が贈る傑作短編集。鮮やかに息づく怪奇と幻想と夢魔の世界。

  『渚にて』ネビル・シュート/井上勇訳(1957年)
最終戦争によって世界に終末が訪れようとしたとき、人々は? 一隻の潜水艦が調査に出る。迫真の感動をもって迫る名作。


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■SFの改革…………………1960年代
  『異星の客』R・A・ハインライン/井上一夫訳(1961年)
地球文明とは何か。SF界の巨匠が、持てる思想をあますところなく注ぎ込んだ渾身の一冊。ヒューゴー賞を受賞した大作。

  『グレイベアド――子供のいない惑星』B・W・オールディス/深町眞理子訳(1964年)
人類に子供が生まれなくなって50年が過ぎ、世界の平均年齢は70歳に達しようとしていた。誰も想像しなかった終末の姿。

  『惑星カレスの魔女』J・H・シュミッツ/鎌田三平訳(1966年)
宇宙船乗りが助けたかわいい三姉妹、実は禁断の惑星からきた魔女だった! 痛快モダンスペースオペラ。カバー:宮崎駿

  『結晶世界』J・G・バラード/中村保男訳(1966年)
世界のすべてが結晶と化してゆく。なんと美しい滅びの書。ニューウエーブSFを代表する鬼才作家の傑作。星雲賞受賞作。

  『賢者の石』コリン・ウィルソン/中村保男訳(1969年)
大脳の秘密、タイムトラベル、ムー大陸、ラヴクラフト、人類進化……天才ウィルソンのみ語りうる壮大なヴィジョン。

  『歌う船』アン・マキャフリー/酒匂真理子(1969年)
生まれつき障害を得た少女ヘルヴァは宇宙船となって甦った。米国ナンバーワン人気女流作家が最も愛着があると語る傑作。


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■探偵小説の復権…………1970年代
  『皆殺しパーティ』天藤真(1972年)
地方都市の大ボス吉川太平の殺害予告に始まる一連の事件を、標的の太平自身が語る。容疑者多数、加害者側に死者続出!

  『黒後家蜘蛛の会1』アイザック・アシモフ/池央耿訳(1974年)
安楽椅子探偵の歴史に新たな1ページを書き加えた名連作。会話、会話、会話! さあ、あなたも推理の競演に参加しよう。

  『亜愛一郎の狼狽』泡坂妻夫(1978年)
容姿端麗だが行動は三枚目の名探偵、亜愛一郎。風変わりな設定と伏線の妙、チェスタトン風の論理と展開で描く第一集。

  『バイバイ、エンジェル』笠井潔(1979年)
ラルース家を巡る連続殺人事件がパリの街を震撼させる。日本人青年矢吹駆の現象学的推理が光る、重厚な本格ミステリ。

  『暗闇の薔薇』クリスチアナ・ブランド/高田恵子訳(1979年)
謎解きミステリ界屈指の実力者が贈る華麗な一輪の薔薇。無類の傑作短編集『招かれざる客たちのビュッフェ』も、ぜひ!

  『古本屋探偵の事件簿』紀田順一郎(1982年〜)
“本の探偵──何でも見つけます”という広告につられ古書店「書肆・蔵書一代」を次々訪れる奇妙な依頼人の探究書は……


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■ハードSFの新時代………1970年代
  『タウ・ゼロ』ポール・アンダースン/浅倉久志訳(1970年)
32光年彼方に向け飛び立った宇宙船に事故発生。減速できなくなった彼らを待つものは……。究極の宇宙SF。星雲賞受賞。

  『神の目の小さな塵 上下』ニーヴン&パーネル/池央耿訳(1974年)
人類帝国の宇宙海軍艦は恐るべき異星人種族と出会った。ありうべきファーストコンタクトの姿を活写した本格SFの傑作。

  『星を継ぐもの』J・P・ホーガン/池央耿訳(1977年)
月で発見された、宇宙服を着た50万年前の人間の死体の謎。ホーガンはこの処女作1作で現代ハードSFの巨匠となった。

  『ティーターン』ジョン・ヴァーリイ/深町眞理子訳(1978年)
新発見された土星の衛星は巨大な恒星間宇宙船だった。NASAの飛行士が乗り込むが。ハードSF+冒険ファンタジイ。


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■現代ミステリと現代SF………1980年代
  『暗闇のスキャナー』P・K・ディック/山形浩生訳(1977年)
謎のドラッグを追って単独行動をとる覆面捜査官。現代アメリカSF界が生んだカルト作家の最高作。宮部みゆきが絶賛。

  『にぎやかな眠り』シャーロット・マクラウド/高田恵子訳(1978年)
架空の大学町に、個性あふれる面々が快い笑いをかもしだすユーモア連作第1弾! シャンディ教授の飄々たる活躍を見よ。

  『死者の書』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳(1980年)
ミステリ? ファンタジー? それともホラー? 優しさと残酷さに満ちたキャロルの世界には、もうはまるしかない!

  『北壁の死闘』ボブ・ラングレー/海津正彦訳(1980年)
第二次大戦の秘密を握る、アイガー北壁のドイツ兵の遺体。日本冒険小説協会大賞を受賞した山岳冒険小説の最高傑作!

  『野獣の街』エルモア・レナード/高見浩訳(1980年)
敏腕刑事と悪党の火花散らす対決を圧倒的な臨場感で描く、警察小説の雄編。ストレートで骨太な物語が、実に忘れがたい。

  『フィーヴァードリーム 上下』G・R・R・マーティン/増田まもる訳(1982年)
19世紀のミシシッピ川を舞台に展開する吸血鬼の闘い、そして人間とのあいだに生まれてきた友情。たぐい希な名作!

  『クリスマスのフロスト』R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳(1984年)
不屈の仕事中毒フロスト警部が、続発する難事件に不眠不休の大奮戦。不敵な笑いのセンスが喝采を博した個性派警察小説。

  『12月の扉 上下』ディーン・R・クーンツ/細美遙子訳(1985年)
ベストセラー作家クーンツがオモシロ小説のテクニックをフル稼働! 読みだしたら止まらない! 超訳なんかじゃないぞ。

  『水の戒律』フェイ・ケラーマン/高橋恭美子訳(1986年)
ユダヤ人コミュニティでレイプ事件が発生。赤毛の刑事と正統派ユダヤ教徒が出逢う恋愛小説でもある、スリリングな物語。

  『戦士志願』L・M・ビジョルド/小木曽絢子訳(1986年)
貴族に生まれながら士官学校の門を閉ざされた17歳の少年は、単身宇宙へ乗り出すが。ユーモアと冒険のスペースオペラ・シリーズ開幕。

  『幻の終わり』キース・ピータースン/芹澤恵訳(1988年)
最盛期のハメット、チャンドラーを思わせると評されるハードボイルドの逸品。クラヴァン名義の『真夜中の死線』も見事。

  『ゴミと罰』ジル・チャーチル/浅羽莢子訳(1989年)
主婦探偵が展開するのは名推理? それとも大騒動? 三児の母が我が家を守るため探偵役を買って出る、アガサ賞受賞作


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■百花繚乱…………………1990年代
  『ストリート・キッズ』ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳(1991年)
プロの探偵にいろはを叩きこまれた元ストリート・キッドが、繊細な心を減らず口のかげに隠して、胸のすく活躍を展開!

  『氷の家』ミネット・ウォルターズ/成川裕子訳(1992年)
怪異な物語が、後半ぐんぐんと姿を変えていく、この驚き! ミステリ界に新女王の誕生を告げる、清冽なデビュー長編。

  『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン/梶元靖子訳(1992年)
1888年、イギリス。ドラキュラの治世ここに始まる……遊びの精神に満ちた大胆な設定でおくる、かの名作の続編。

  『レッド・マーズ 上下』K・S・ロビンスン/大島豊訳(1993年
人類初の火星開拓に挑む百人の科学者の苦闘。巨匠A・C・クラークが絶賛した、最高にリアルな火星SF。ネビュラ賞・星雲賞受賞。

  『チャイナタウン』S・J・ローザン/直良和美訳(1994年)
年齢も育ちもまるで違う二人の男女が、真冬のニューヨークに消えた磁器を追う。清新な魅力に心が躍る、抜群の探偵物語。

  『カーラのゲーム 上下』ゴードン・スティーヴンズ/藤倉秀彦訳(1996年)
1994年冬、彼女のゲームは内戦のボスニアから始まった……重厚な筆致で比類なき感動を呼ぶ本格的冒険小説大作!

  『惜別の賦』ロバート・ゴダード/越前敏弥訳(1997年)
万華鏡さながらに変転する物語をさばく、稀代の語り部の手練をごろうじろ。勿論、驚嘆の物語『千尋の闇』もお忘れなく。

  『終わりなき平和』ジョー・ホールドマン/中原尚哉訳(1997年)
戦争のためのシステムが人類を次のステージに運ぶ。『終りなき戦い』から20余年、巨匠が新たに挑むヒューゴー賞受賞作。

  『クリスマスに少女は還る』キャロル・オコンネル/務台夏子訳(1998年)
一読しては結末の衝撃と感動に震え、再読では巧緻なプロットに唸る超絶技巧の傑作!『このミス200』第6位。

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■日本ミステリ・ルネッサンス……1990年代
  『月光ゲーム Yの悲劇'88』有栖川有栖(1989年)
英都大学推理研の一行が夏合宿に訪れた矢吹山が突如噴火し、居合わせた17名は立往生。この極限状況で殺人事件が……。

  『空飛ぶ馬』北村薫(1989年)
大学生の語り手《私》と噺家の円紫師匠が出逢い、日常の風景の中で犀利な推理を繰り広げる。5編収録のデビュー作品集。

  『パーフェクト・ブルー』宮部みゆき(1989年)
高校野球界のスターが殺された。被害者の弟進也と探偵事務所の加代子、元警察犬マサが事件を追う、直木賞受賞作家のデビュー長編。

  『キッド・ピストルズの冒涜』山口雅也(1991年)
パラレル英国で難事件に挑む、パンク刑事キッド・ピストルズの雄爽活躍譚。マザーグースに想を得た本格ミステリ第1集。

  『ぼくのミステリな日常』若竹七海(1991年)
月刊社内報の読切連載という構成のもとに綴られる12編、四季折々の物語を旅した後は、ミステリの迷宮へご案内します。

  『七つの棺――密室殺人が多すぎる』折原一(1992年)
黒星光(くろぼし・ひかる)38歳、向かう現場は今日もまた密室なのである。密室の魅力に取り憑かれた迷警部が、7つの事件に迷推理で挑む!

  『ななつのこ』加納朋子(1992年)
ファンレターをきっかけに始まった短大生と作家の往復書簡が鮮やかにミステリーを描き出す、第3回鮎川哲也賞受賞作。

  『凍える島』近藤史恵(1993年)
総勢8名が降り立った瀬戸内海の島を舞台に起こる殺人事件。孤島テーマをモダンに演出する、第4回鮎川哲也賞受賞作。

  『慟哭』貫井徳郎(1993年)
幼女誘拐事件の捜査が難航、内部の不協和音とマスコミの雑音でキャリアの課長が窮地に陥ったとき、事態は思わぬ方向へ!

  『邪馬台国はどこですか?』鯨統一郎(1998年)
邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、本能寺の真相……読んでびっくりの六編。定説を覆す奇想天外な歴史ミステリ連作集。

  『五つの時計 鮎川哲也短編傑作選』北村薫編(1999年)
本格派の驍将鮎川哲也の軌跡を辿る好個のベスト集成。表題作など10編を収録。第2集『下り“はつかり”』も併せてどうぞ。