2010年度の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞
贈呈式ひらかる

 2010年10月8日、飯田橋のホテル メトロポリタン エドモント〈悠久の間〉にて、〈第20回鮎川哲也賞〉の贈呈式が開かれました。当日は、多数の皆さまにご来席いただいたほか、動画共有サービスUstream(ユーストリーム)によるインターネット生中継もおこないました。

2010年度贈呈式の模様1〈第20回鮎川哲也賞〉は安萬純一氏『ボディ・メッセージ』(応募時の『ボディ・メタ』を改題)、月原渉氏『太陽が死んだ夜』(応募時の筆名・月原少年を改名)の2作同時受賞となりました。また、〈第7回ミステリーズ!新人賞〉は美輪和音氏『強欲な羊』(応募時の筆名・大良美良子を改名)が受賞、明神しじま氏の「商人の空誓文」、 深緑野分氏の「オーブランの少女」が佳作入選しました。

 〈第20回鮎川哲也賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して北村薫先生が述べられました。

「『ボディ・メッセージ』は、冒頭から作品世界に引き込まれる魅力的な謎が提示され、選考委員の一人から近年稀に見る本格ミステリの傑作であるという言葉が出たほど、惹きつけられる作品だった。『太陽が死んだ夜』は登場人物の書き分けがうまく、海外を舞台にしていることにきちんと必然性が感じられた。作品世界が非常に魅力的で、物語として満足のいく仕上がりになっていた。」

 受賞者の安萬純一氏、月原渉氏が登壇され、それぞれ小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに両氏には選考委員の島田荘司先生より、正賞のコナン・ドイル像が手渡され、〈第19鮎川哲也賞〉の受賞者である相沢沙呼先生より花束が贈呈されました。また、〈浜松ミステリー愛好会〉からの記念の花束が、谷島屋書店メイワン店・寺田結美さんより贈呈されました。

 受賞の挨拶で、安萬純一氏は「はじめてクリスティの作品を読んだ中学生のときから、本格ミステリは心のなかに灯り続ける大切なジャンルだった。今までは読むだけで満足していたが、試行錯誤を経てこの場に立つことができた。自分を支えてくれた人々に心からの感謝を伝えたい。」と、受賞の喜びを語られました。

 ついで月原渉氏は「鮎川賞への挑戦は本当に困難を極め、まさか受賞に至るとは思っていなかった。賞の名を汚さぬよう、初心を忘れずにさらなる作品を書き続けていきたい。」と受賞の喜びと今後の抱負を語られました。

 続いて、〈第7回ミステリーズ!新人賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して辻真先先生が述べられました。

「今年は8編が最終候補作に残り、バラエティに富んだ作品が集まった。非常に豊作の年と言える。その中でも、読者に立ちくらみを起こさせるような、すぐれた作品を選んだ。受賞作は非常に完成度が高く、文章力も際だっており、他の作品に較べて一歩進んでいるという印象を受けた。どんどん書いていける人だと思うので、これからの活躍を期待している。」

2010年度贈呈式の模様2  受賞者の美輪和音氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに選考委員の桜庭一樹先生により、正賞の懐中時計が手渡され、〈第3回ミステリーズ!新人賞〉の受賞者である滝田務雄先生から花束が贈呈されました。

 受賞の挨拶で、美輪和音氏は「目の前にそびえる高い壁を越えることができて、幸せな気持ちで一杯です。これからも先生方を驚かせるような作品が書けるよう、貪欲に学んで精進していきたい。」と今後の決意を語られました。

2010年度贈呈式の模様3 最後に、乾杯の辞として、著書『光媒の花』が第23回山本周五郎賞を受賞した道尾秀介先生より乾杯の辞をいただき、その後大いに歓談が盛り上がりました。 なお、本年は〈鮎川哲也賞〉創設20周年にあたり、その記念として鮎川哲也先生にちなんだオリジナルカクテルを用意しました。麦焼酎をベースにした「青い密室」、カンパリベースの「赤い密室」に加え、ココア風味のノンアルコールカクテル「鬼貫スペシャル」を取りそろえました。さらにサプライズイベントとして、〈第19回鮎川哲也賞〉の受賞者である相沢沙呼先生にマジック・ショーを披露していただきました。会場の皆さんが固唾を呑んで見守るなか、みごと大成功し会場からは大きな歓声が挙がっていました。

 鮎川哲也賞受賞作、安萬純一『ボディ・メッセージ』、月原渉『太陽が死んだ夜』は好評発売中です。同賞および〈第7回ミステリーズ!新人賞〉の選評は『ミステリーズ!』vol.43に掲載されています。
 次回〈第22回鮎川哲也賞〉は平成23年10月末日〆切、〈第8回ミステリーズ!新人賞〉は、平成23年3月末日〆切となります。皆さまのご応募をお待ちしております。
(2010年11月5日)

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