《999》ブラム・ストーカー賞を受賞!

 去る5月13日、アメリカのHWA(ホラー作家協会 Horror Writers Association)選定のブラム・ストーカー賞の、今年度受賞作が発表されました。
 上記のとおり、《999》(邦訳は創元推理文庫、全3巻)がアンソロジー部門を受賞。さらには収録作品の1編も栄冠に輝きました。
 以下に受賞作と候補作をご紹介します(受賞作は◎で、候補作は○で表示しました)。

【長編部門】
◎ピーター・ストラウブ『ミスターX』(上下)(創元推理文庫)
○トマス・ハリス『ハンニバル』(新潮文庫)
○スティーヴン・キング Low Men in Yellow Coat (Hearts of Atlantis 所収)
○アウル・ゴーインバック Darker than Night
○トム・ピチリッリ Hexes
*ピーター・ストラウブの受賞作『ミスターX』 は、ドッペルゲンガーをテーマにしながら、もちろんそれだけでは終わらず、豊かな物語世界を展開する傑作です。
 ところで候補作ですが、まずは『ハンニバル』。評判は絶賛から「???」までさまざまですが、あなたのご感想は? キングは短編集部門でも候補に上がっているのですが、収録作が長編としてさらに候補作、というのは、なかなか例のないことではないでしょうか。邦訳が楽しみですね。同様に短編集部門でも候補に上がったピチリッリはどんな作家なのでしょうか、気になります。また、ネイティヴ・アメリカンには珍しいホラー作家のゴーインバックは、1997年にデビュー作 Crota で新人部門を受賞。長編部門の候補にも挙がりました。

【新人部門】
◎J・G・パサレラ Wither
○ジョン・コノリー Every Dead Thing
○スティーヴ・ビー Widow's Walk
○チャイナ・ミーヴィル King Rat

*さすがに新人、まだ日本でも知られている人はいないようです。

【中編部門】
◎ジョー・R・ランズデール「狂犬の夏」(創元推理文庫『999−狂犬の夏−』収録)
○ジャック・ケッチャム Right to Life
○ブライアン・A・ホプキンズ Five Days in April
○ チャーリー・ジェイコブ Dread in the Breast

*ランズデールは中・短編部門ですでに数回受賞し、名手ぶりを感じさせますが、邦訳されたのは「ミッドナイト・ホラーショウ」(SFマガジン1990年5月号)、「キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの記」(創元推理文庫『死霊たちの宴 下』収録)に続いての3作目。なお、ケッチャムの候補作も、近く邦訳されるとの噂。楽しみですね。

【短編部門】
◎F・ポール・ウィルスン After Shock
○P・D・カセック「墓」(創元推理文庫『999−聖金曜日−』収録)
○ラムジー・キャンベル「ザ・エンターテインメント」(創元推理文庫『999−聖金曜日−』収録)
○スティーヴ・ラスニック・テム Halloween Street
*日本でもおなじみの作家が並びました。ウィルスンは意外にもこれが初の受賞。カセックは1997年に「メタリカ」(SFマガジン1999年9月号)で、キャンベルは1994年に短編集 Alone with Horror で受賞しています。名手として名高いテム、いまだ無冠の帝王ですが、短編集は出ないものでしょうか。

【短編集部門】
◎ダグラス・クレッグ Nightmare Chronicles
○スティーヴン・キング Heart in Atlantis
○エド・ヴァン・ベルコム Death Drives a Semi
○トム・ピチリッリ Deep into that Darkness Peering
*日本でも知る人ぞ知る作家だったクレッグは、長く賞とは無縁で、数多いペーパーバック・ホラーの書き手のように見られていましたが、この短編集と今春刊行された長編 You Come When I Call You で一躍注目を集めそうです。

【アンソロジー部門】
◎アル・サラントニオ編 999−妖女たち/聖金曜日/狂犬の夏−(創元推理文庫)
○エレン・ダトロウ&テリー・ワインドリング編 The Year's Best Fantasy and Horror, Twelfth Annual Collection
○スティーヴン・ジョーンズ編 The Mammoth Book of New Horror 10
○ ジョン・ペラン編 The Last Continent: New Tales of Zothique
*やはり、サラントニオの気魄が伝わったのでしょうか。この1冊(日本では3冊ですが)は、20世紀ホラーの掉尾を飾る記念碑となりえたようです。

他の部門につきましては、受賞作のみにて。
【ノンフィクション部門】雑誌 Dark Echo 1999年発行号
【コミックブック部門】ニール・ゲイマン『サンドマン』Sandman: The Dream Hunters
【映画脚本部門】シックス・センス
【ジュヴナイル部門】J・K・ローリング『ハリー・ポッターとアズバカンの虜囚』Harry Potter and the Prizoner of Azkaban
【その他のメディア部門】ハーラン・エリスン Have No Mouth and I Must Scream(オーディオブック)
【功労賞】エドワード・ゴーリー、チャールズ・L・グラント

 HWAのホームページをご紹介します。ストーカー賞はもちろんのこと、アメリカ・ホラー界のさまざまな情報が盛り込まれ、更新もこまめにされているので見ているだけでも楽しめます。ご興味がおありの方は、ぜひ御覧のほどを。

 http://www.horror.org/
(2000年5月)
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