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劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』

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原作『オペラ座の怪人』は創元推理文庫から発売中です

 今日もまた、無人の廊下で足音が響き、どこからともなく不思議な声が聞こえてくる。人か魔か。どくろの相貌を持ち、一連の謎めいた出来事のかげに跳梁する〈オペラ座の幽霊〉とは何ものなのか? シャニイ子爵は、美しい歌姫に恋い焦がれるうち事件の渦中に巻き込まれ、オペラ座の奈落へと分け入っていく。だがそこは、闇の原理が支配する人外境。そして想像を絶した冒険、虚実入り乱れて展開する多彩な物語の果てに浮かび上がったのは、この世ならぬ愛の姿だった!

 ――フランスの人気作家ガストン・ルルーが、前世紀初頭の1910年に刊行した『オペラ座の怪人』は、この世ならぬ謎と怪異が繰り広げられる、怪奇スリラーの名作です。ルルーの奔放な想像力がうみだした、この恐怖と愛の物語は、セーヌ河右岸に実在するオペラ座を舞台としたことで、色褪せるどころかかえって禍々しくも妖しいイメージを放つことに成功しました。その魔物じみた魅力は多くのクリエイターの心を掴んだらしく、映像化や舞台化の試みがあとを絶ちません。

 オールドファンにとって懐かしいのは、1925年にアメリカで制作されたルパート・ジュリアン監督による映画『オペラの怪人』でしょう。主演のロン・チャーニーがとにかく印象的で、紀田順一郎氏は〈地下室でクリスチーヌがオルガン演奏中の怪人のマスクを剥ぐ"アンマスク・シーン"は、怪奇映画有数の名場面としていまだに語り草となっている〉と本書の解説で語っています。新しくは、1973年にブライアン・デ・パルマ監督が、ポール・ウィリアムズ主演で『ファントム・オブ・パラダイス』というロック・ミュージカル映画に(ええっ……?)仕立てているそうですが、近年もっとも華やかな話題を呼び、多くの観客をときめかせたものといえば、ハロルド・プリンス演出、アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲による、1986年初演の劇場用ミュージカル『オペラ座の怪人』を挙げるべきでしょう。日本でも劇団四季が1989年以来、公演をつづけていて、変わらぬ人気を誇っているようです。原作のもつ、恐ろしいけれども、どこか切ない味わいが巧みに舞台化され、オペラ座地下の闇のひろがりさえ感じさせる、秀逸な仕上がり。

 作者のルルーは、1868年パリの郊外に生まれた人です。パリ大学で法律を学んだのち、『ル・マタン』紙の海外特派員となってヨーロッパや中東を飛び回っていましたが、1904年にデビュー長編を発表し、職業作家に転じました。古風で波瀾万丈な物語を紡ぎだして大変な評判をとると同時に、謎解き小説の古典的名作『黄色い部屋の謎』や、戦慄の物語を集めた『ガストン・ルルーの恐怖夜話』などで、ミステリと恐怖小説の両分野に忘れがたい業績を残しました。『オペラ座の怪人』とともに読み継がれていってほしいものだと思います。

(2001年10月25日)

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