東京創元社60周年

 

わたしと東京創元社  太田忠司(作家)

 

奇談蒐集家

 ミステリやSF、怪奇小説を読みはじめた頃、東京創元社の本は僕を海外の名作という未知の大海へと誘ってくれる素敵な水先案内人でした。

 

 小遣いを貯めては創元推理文庫を一冊ずつ手に入れる。それは何にも代えがたい楽しみでした。クイーン、ヴァン・ダイン、カー、ブラウン、ブラッドベリ、ラヴクラフト、マッケン……綺羅星のような海外作家の名前を衝撃と共に覚え、その作品に耽溺(たんでき)しました。

 

 日本探偵小説全集の刊行は別の意味で衝撃的でしたね。創元で国内作家の作品も読める日が来るとは思いもしませんでしたから。

 

 それが今では自分の作品が東京創元社から出ている。なんだかもう衝撃が強すぎていまだに夢かと思うばかりです。

 

 これからも僕の人生に大きな衝撃を与え続けてください。

 


■太田忠司(おおた・ただし)
1959年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業。81年、「帰郷」が「星新一ショートショート・コンテスト」で優秀作に選ばれる。『僕の殺人』に始まる〈殺人三部作〉などで新本格の旗手として活躍。2004年発表の『黄金蝶ひとり』で第21回うつのみやこども賞受賞。〈狩野俊介〉〈霞田兄妹〉〈探偵・藤森涼子〉〈新宿少年探偵団〉など多くのシリーズ作品ほか、『刑事失格』『奇談蒐集家』『ミステリなふたり a la carte 』『目白台サイドキック 女神の手は白い』『死の天使はドミノを倒す』など著作多数。