わたしと東京創元社 長谷川晋一(東京創元社代表取締役)
僭越ながら、本企画の締めくくりということで駄文を一筆。
40年以上も昔、まだ学生のころ。文庫で読める海外ミステリの宝庫といえば創元推理文庫だけでした。なかでもG・K・チェスタトンの『ブラウン神父の童心』に始まる短編集全5巻は、騙し絵さながらの、アクロバティックな論理が織りなす知的興奮に満ちた古今無双の逸品。
自分も、こんなすごい本を世に送り出してみたい。それなら東京創元社の編集者になるのがいちばん。そんな若気の至りで入社したのが運の尽き。ふと気がつけば幾星霜、人生の大半をこの出版社とともに過ごしてまいりました。
こうなるともう腐れ縁か悪女の深情か。ミステリに限らずSFもファンタジイもホラーも、洋の東西すら問わずにジャンル小説をすべて制覇すべく、これからも弊社スタッフの尻を叩きつつ出版活動に邁進してゆく所存です。
最後に――わたしは生まれ変わっても、またこの東京創元社に入社することでしょう。たぶん、きっと。
■長谷川晋一(はせがわ・しんいち)
1954年東京都生まれ。明治大学卒。1977年東京創元社に入社し編集部へ配属。以後20数年にわたり翻訳書担当を務め、さらに製作・広告宣伝・装幀関係の仕事を兼務ののち1997年に取締役出版部長に就任。2001年には代表取締役社長に就任し、現在に至る。