わたしと東京創元社 加納朋子(作家)
わたしと東京創元社との出会いは、大袈裟ではなく、わたしの人生を激変させるものでした。もし、第三回鮎川哲也賞に応募していなかったら。おそらく今、「加納朋子」という小説家は存在していなかったでしょう。
当時の私は、「生涯でもし一冊だけでも自分の本が出せたら素敵だけど、でもそんなの無理だし」と思っていましたし、もし応募した作品が落選していたら、次にチャレンジするような気概も持ってなかったのです。
それが何と、ひたすら愛読していた、創元推理文庫に入れて頂くようなことになるとは。今さらながら、驚きです。
東京創元社との出会いがわたしにもたらしてくれた、たくさんのかけがえのない方々との出会いに、心から感謝しています。そういう意味でも、だいぶ人生変わりましたね……。
この、わたしにとっての大きな幸運が、一人でも多くの方々にとってのささやかな幸運であってくれますように。
■加納朋子(かのう・ともこ)
北九州市生まれ。文教大学女子短期大学部文芸科卒業。『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。95年、『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞受賞。著書に『魔法飛行』『スペース』『沙羅は和子の名を呼ぶ』等がある。