東京創元社60周年

 

わたしと東京創元社  法月綸太郎(作家)

 

オランダ靴の謎

 東京創元社との関わりで真っ先に思い出すのは、一九九四年から二〇〇三年までの十年間、「創元推理評論賞」の選考委員を務めたこと。選考委員といっても、最初の頃は自分もまだ駆け出し同然で、受賞者・入選者と一緒に一人前に育ててもらったようなものですが。この賞が母体となって探偵小説研究会が結成され、『本格ミステリ・ベスト100 1975-1994』や創元版「本ミス」(’98~2000)を作っていた時代が懐かしいです。

 

 月日がたつのは早いもので、「創元推理評論賞」が終了してから、もう十年が過ぎました。推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を制覇した千街晶之氏や円堂都司昭氏を筆頭に、評論賞OBも今やベテランになりつつあって、そろそろ生きのいい新人の登場が望まれるところです。創立六十周年というキリのいい年でもありますし、今年か来年あたり、ミステリ評論の新人賞を復活させてはいかがでしょう。東京創元社へのお願いです。

 


■法月綸太郎 (のりづき・りんたろう)
1964年島根県生まれ。京都大学卒。88年『密閉教室』でデビュー。2002年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞を受賞。05年『生首に聞いてみろ』で第5回本格ミステリ大賞を受賞する。主な著書に『ふたたび赤い悪夢』『法月綸太郎の冒険』『ノックス・マシン』、アンソロジー参加に『あなたが名探偵』『リレーミステリ 吹雪の山荘』などがある。現在、本格ミステリ作家クラブの会長を務める。