20112

20112 page 9/12

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列車はがたんごとんと走り続け、白雪におおわれた平原の中を通り抜けた。ときおり、生い茂った木の幹のおかげで地面に雪が積もらなかった森のあいだを通った。サイモンは視線をイギリスの美しい田園風景からアッシュ....

列車はがたんごとんと走り続け、白雪におおわれた平原の中を通り抜けた。ときおり、生い茂った木の幹のおかげで地面に雪が積もらなかった森のあいだを通った。サイモンは視線をイギリスの美しい田園風景からアッシュリーのほうへ移して尋ねた。「いつからロンドン警視庁の警部さんが雪の上の足跡を調べることになったのですか?」アッシュリー警部は顔をしかめた。「状況が非常に奇妙なんですよ。最近の足跡のニュースがあなたの関心も引いたのですから、もちろん、あの言い伝えのことはよくご存じですよね」サイモンはうなずいた。「わたしなら言い伝えとは呼びませんがね。百年も前に起きた出来事ですが、確かな事実です。ある朝、デヴォンシャーといくつかの村の人々が目を覚ますと、ひづめ雪の上に先の割れた妙な蹄の跡があった。その足跡は一直線に続いていて、八インチの間隔がきちあり、まるで一本脚の動物が雪の上を走り過ぎたようだった。しかし、既知の動物の足跡ではなかった。その足跡は平原に続き、柵や川を越え、家の屋根さえも越えた。村人たちは犬を連れて、その足跡をたどった。しかし、近くの森まで来ると、犬たちは吠え始め、それ以上進むことを拒んだ。それで、その奇妙な足跡か蹄跡は悪魔自身によるものだという言い伝えが広まったんです。そのあと、この地域のほかの場所でも、同じような足跡が雪の上に見つかりましたが、納得のゆく説明はまだなされていません」アッシュリーは新たな称賛の目でサイモンを見た。「あなたはこの現象についてかなり研究なさったようですね」「わたしはこの数世紀に起こった説明不可能な怪奇現象について研究しています」13 悪魔の蹄跡