18106 page 8/10
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14「だといいけど」ボソボソと応じた。「心配しないの、鍵はしっかりかかってるんだから」少々上から目線で言われる。そしてその言葉を裏づけるべく、扉をつかんでガタガタと揺すった。「ほら、これじゃ誰も盻眇」 ....
14「だといいけど」ボソボソと応じた。「心配しないの、鍵はしっかりかかってるんだから」少々上から目線で言われる。そしてその言葉を裏づけるべく、扉をつかんでガタガタと揺すった。「ほら、これじゃ誰も盻眇」 そのとき、ルイ少年の遺物箱のとなりにある、青銅製の飾り壺の後ろから何かが飛び出してきた。一瞬見えたのは、歪んだ緑色の顔。背の高い人影がすさまじい勢いで向かってくる。思わず後ずさるも、背中はすぐに冷たい石壁に突き当たった。墓場荒らしは、錬鉄製の扉に体当たりして力ずくで抜け出し、シンディをなぎ倒して、墓地の中をのびる曲がりくねった道を、長く黒いマントをはためかせながら猛然と走っていった。ものすごい早口で悪態をつくシンディ。それでも彼女はさっと立ちあがると、百五十センチ、四十五キロほどの小さな体ですぐさまあとを追った。ガゼルを思わせるしなやかな身のこなしで、クロスカントリーの選手よろしく墓標を飛びこえ、石碑を右に左に避けながらどんどんスピードをあげていく。逃げていくやつはもう、目と鼻の先だ。シンディが、丘の斜面を掘ってつくった玄室の天井部分にさっと飛び乗る。そこから一気に、墓場荒らしの背中に飛びかかった。そしてそのままふたりいっしょに、道の脇にある浅い排水溝の中に転がり落ちていった。 わたしも急ぎ走っていく。その先では、ふたつの黒い人影が手足をばたつかせ、転げ回り、くぐもった叫び声をあげていた。シンディは一歩も引かずに頑張ってたようだったけど、わたしがあと二十メートルほどのところまで行ったとき、墓場荒らしはシンディを振りほどくと、顔はしっかりマントで隠したまま、墓地正門目指して半ばよろけながら走っていった。