18106 page 6/10
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12スと、シミひとつない縞模様のエスパドリーユ(甲部分はキャンバス地、底部は麻製。もともとはフランスとスペインの国境近くの町バスクの民族靴)。真っすぐにのびた黒い前髪は、これまた皺ひとつない額にかからな....
12スと、シミひとつない縞模様のエスパドリーユ(甲部分はキャンバス地、底部は麻製。もともとはフランスとスペインの国境近くの町バスクの民族靴)。真っすぐにのびた黒い前髪は、これまた皺ひとつない額にかからないよう、幅の広い石せき竹ちく色のヘアバンドできちんとまとめてあった。一方、すっきりしているとは言いがたい体型のわたしが身につけていたのは、いつもの仕事着。絵の具で汚れた黒いTシャツに、色褪せたデニム地のオーバーオール、見るからに安っぽいランニングシューズ。靴下はなし。栗色の巻き毛は頭頂部で適当にまとめ、崩れてこないよう絵筆を差してとめてあった。おしゃれな友人にしてジュエリーデザイナーのサマンサは、わたしの絵筆の使い方が〝流行の先端をいっている?と誉めてくれたけど、要は使いたいときにヘアピンを見つけられたためしがないだけのこと。「よろしく」そう言って右手を差し出したとき気づいた。親指以外の四本はどれも先のほうが、先刻まで天使たちのローブを描くのに使っていた毒々しい朱色に染まっていたし、唯一残った親指も、絵を古めかしく見せるために使ったバーントアンバーのグレーズで汚れてる。 そんなけばけばしい手を、シンディは、汚れひとつついていない、きれいな引き締まった手で握ってくれた。それからふたり揃ってじっと見つめたのは、闇に沈んだクリプトの中。それぞれが手にした懐中電灯の明かりに、その一部が浮かびあがる。「あの古代エジプトのモチーフには、何か意味があるの眤 近くにある他のピラミッドでも見かけたんだけど」「二、三〇年代に人気があったの。大ピラミッドの発掘が盛んだったころ。何とかして少しヒエログリフを読んでみようと思ってるんだけど、大半は飾りじゃないかな」シンディはふっと