東京創元社60周年

 

わたしと東京創元社  小木曽絢子(翻訳家)

 

戦士志願

 ビジョルドのシリーズで東京創元社にお世話になってからもう十五年ぐらいになる。紀伊国屋で見つけた原書が面白かったので柴野拓美(小隅黎)先生に相談したら、創元の小浜さんに相談してみたら、といわれたのがきっかけだった。

 

 それがビジョルドの『自由軌道』だった。そのときたまたま、小浜さんがビジョルドの『戦士志願』を出してみようかと考慮中だったのが幸いした。ではとりあえずこれをやってみて下さい、と『戦士志願』を渡されて、それがわたしの単独で訳した最初の本になった。運というのはそんなものかと思う。

 

 そのころこれもたまたま米国に行く機会があって、ビショルドの家まで会いに行き、それから親密な仲になった。当時は作家としてまだ駆け出しだったビジョルドは、そのあと米国のみならず世界的に人気を博してSFの各賞の常連になった。ということで、創元社との縁もビショルドとの縁も長く続くことになった。運がよかったという話である。

 


■小木曽絢子(おぎそ・あやこ)
東京女子大学卒。主な訳書にビジョルド〈ヴォルコシガン・シリーズ〉〈死者の短剣四部作〉などがある。