米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

春期限定いちごタルト事件 小鳩くんと小佐内さんは恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係を持つ高校1年生。今日もふたりは手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、今日もふたりの前にはおかしな謎が現れる。

 学校内で消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト最中に割れた小瓶、盗まれた自転車。名探偵面をして目立ちたくない、地味に生きてゆきたいと願う小鳩くんは、果たして空にひっそりと輝くあの小市民の星をつかみ取ることができるのか?

さよなら妖精「羊の着ぐるみ」「Your eyes only」「おいしいココアの溶き方」「はらふくるるわざ」「狐狼の心」の5編を収録した連作短編集、また主人公の小鳩君と小佐内さんのコミカルな日常を描いた長編としても読めるこの物語は、《ミステリ・フロンティア》第3回配本作品『さよなら妖精』とはかなりトーンの違うコメディ・タッチのライトなミステリです。気軽にお手にとって楽しんで戴ければ、と思います。創元推理文庫特別書き下ろし、浅暮三文さんの『ラストホープ』に続く2回目のミステリ・フロンティア出張版作品です。

(2004年11月10日)
本の話題のトップへトップページへもどる